「脳の中の欲望」

月に一度朝日新聞の夕刊に掲載される島田雅彦文芸時評。今回は茂木健一郎「脳のなかの欲望」、金原ひとみ「AMEBIC」、山田詠美『風味絶佳』を取り上げている。自分の脳の中にある曖昧な欲望・感情・質感を、言葉によって精緻に他者に伝えることについて書かれている。気になった箇所を引用してみる。

大衆が求める欲望には二種類あって、一つは自分たちの身近な世界を説明してくれるものへの欲望。もう一つは日常からかけ離れた、未知の世界を覗き見したいという欲望。

私自身に引き付けて考えると、まさにピッタリ当てはまる気がする。本を読むのも映画を観るのも、この二種類の欲望を満たすためという側面がある。もう一つ付け加えるとすれば、自分が説明したいと言う欲望もある。表現衝動と言うのか、自己顕示欲というのか。故にこのようなブログを公開するに至るわけだ。
金原ひとみの「AMEBIC」は、脳に浮かぶ過剰な想念を言葉にして吐き出し続ける小説らしい。確か彼女の第2作『アッシュベイビー』もそのような作品だったと思うが、どこかに埋もれて見つからない…金原ひとみに対して、島田氏はこのように書いている。

君はこのまま笙野頼子か、ゴンブローヴィッチばりの妄想人生をひた走るつもりか?
〜中略〜
一人称小説にこの先はない。今後、金原ひとみは他人の脳味噌に何処まで肉薄できるかを試みるべきだろう。

金原ひとみはこの声に応えてくれるかな。