『構成的権力』アントニオ・ネグリ

『構成的権力』アントニオ・ネグリ
ネグリと言えばマイケル・ハートと『帝国』を書いた人であり、その『帝国』は近年で最も重要な書物のうちの一つである。
まあ、それ以上のことを知らなかったので、ここに書かれたネグリの「戦歴」には驚いた。
父親はイタリア共産党創立メンバーで、ネグリが2歳の時に殺された。ネグリは活動家になり、政治活動と表現活動に勤しんだ。1969年創設の「ポテーレ・オペラティオ」(労働者の権力)では指導的役割を果たした。
ここからが凄い。元イタリア首相モロの誘拐暗殺事件が発生し、ネグリは事件に関わったとして逮捕される。4年半にわたって裁判が開かれぬまま収監され、その間にスピノザ論を書いた。1985年には獄中から国会議員に当選し、議員特権によって釈放される。3ヵ月後には議員特権が剥奪され、フランスに亡命。ドゥルーズガタリと親交を深める。97年にイタリアに帰還し逮捕され、2003年に自由の身となった。
まさに「武勇伝」と呼ぶに相応しいですね。
ネグリの思想を理解するのに必要なキーワードは「構成的権力」と「マルチチュード」だ。
「構成的権力」とは憲法制定の力、主権の移行のことである。国民国家の主権を次のステージに進めるために、「帝国」を解体するしかない、と考えたようだ。
現在のグローバルな秩序形態を「帝国」と呼ぶわけだが、この「帝国」はかつてのローマ帝国のような「帝国」でもなければ、植民地主義と連動した帝国主義の中枢としての「帝国」でもない。超国家的制度(IMFWTO、国連安保理)、資本主義大企業、支配的な国民国家群(G8に代表されるような)などで構成されるネットワーク状の権力なのである。
マルチチュード」とはスピノザに由来する言葉で、「自主的多数派」のこと。マルチチュードが「帝国」を解体し、憲法制定権力を持つらしい。今まで私はこの言葉を「多様性」と解釈してきたのだが、ちょっと違ったらしい…