介護入門

一夜明け、祖母の症状に関してある程度考えがまとまった。
アルツハイマーによって神経細胞シナプスが減少し、記憶障害ではなく幻覚や身体的違和感が生じる。元々他人を信用せず、娘や近所の人々を疑っていた祖母は、幻覚や違和感に合理的な説明を与えようとし、「監視されている」「いじめ殺される」「侵入者がいる」という迫害妄想的な結論を出したのだ。
午前9時、ヘルパーと一緒に祖母を病院へ連れて行った。待合室は高齢者がいっぱい…
ヘルパーによると、今まで処方していた薬で効果がない場合、入院して様子を見ることになるので、今回の診察で家族がどうしたいのか聞かれるらしい。
おい、聞いてないよ。
母に電話してみたところ、入院のことは知っていたが、具体的にどうするか決まってないらしい…
YO , 朋輩(ニガー)*1
俺に必要な情報を与えておけよ…
予め対策を講じておけよ…まったくもう。

まずCTを撮ってもらい、その結果を脳外科で聞いた。
驚いた。目立った脳梗塞もない、脳の萎縮もない!!
CTの結果だけで判断してはいけないが、アルツハイマーとは思えない。
次に精神科へ。
ヘルパーと祖母が一通り話した後、二人には退席してもらい、私は一人で医者に質問を浴びせた。要点をまとめると

  • 新しいことを覚えられない、覚えてもすぐ忘れることから、痴呆の初期と診断
  • 妄想に先立って幻覚があるわけで、それを薬で抑える
  • 高齢だから薬を強く出来ないのだが、この際強いのを上乗せする
  • 病棟が一杯なので、入院はできない。しかし備えはしておく

私としては、「記憶がしっかりしていて、脳の萎縮もない。妄想がひどい。これでも痴呆なのか」と暗にほのめかしながら質問していた。でも、現状では「痴呆の初期」と診断するのが精一杯なのだろう。納得できたので、不満はない。勉強しておいてよかったわ。

午後は延々、家で祖母の話を聞き続けた。
祖母は時々涙を浮かべながら話していた。
祖母の「家」を守ると言う使命感や、昔のトラブルに対するしこり、「娘たちは世間を知らないから騙されやすい」という心配など、まあ色々語ってくれましたわ。
祖母は痴呆の初期とは思えないほど明晰で、適当な誤魔化しや逃げは通じないと思った。
祖母の言い分を鵜呑みにしてはいけないと思い、母に電話して実際のところを聞いてみた。祖母は都合よく話を繋げているようだ。とにかく、「母と娘」の関係は複雑ですな。
幻覚に関しては、相当深刻なようだ。話している間もしょっちゅう「光った」と言う。
人間の目に写る「現実」とは、網膜に映る情報を脳が再構成したものだとつくづく実感する。

*1:モブ・ノリオ『介護入門』より