『カリガリからヒトラーへ』ジークフリート・クラカウアー

松岡正剛の千夜千冊『カリガリからヒトラーへ』ジークフリート・クラカウアー
カリガリからヒトラーへ』は、『カリガリ博士』をはじめとするドイツ映画について書かれた本らしい。『カリガリ博士』とは、1919年に封切られたドイツ映画である。この映画を私は見てないが、「見ておくべき映画」であることは分かっている。
執筆の段階では「一切の権威を狂気として暴くテーマ」だったのだが、最終的には権威を擁護する映画が完成した。「その後のドイツを暗示」するエピソードである。
松岡氏はナチスによるプロパガンダを、以下のように分析している。

ドイツ人の魂は、それがユダヤ人であろうとゲルマン人アーリア人)であろうと、叙事詩を好む。とりわけ偉大な叙事詩を好む。
―略―
結論からいえば、ナチの戦意高揚のためのプロパガンダはすべて叙事詩になっている。それ以外のどんなドラマトゥルギーもない。その最たるものはローゼンバーグの第三帝国の神話であるけれど、それだけでなく、どんなヒトラーの演説原稿にも、どんな宣伝映画にも、どんな戦闘記録のフィルムにも、叙事詩が貫かれた。

以前リーフェンシュタールの『民族の祭典』『美の祭典』をDVDで見た。
ドイツ選手が圧倒的に活躍するわけでもないのに、なぜプロパガンダ映画として批判されているのかピンと来なかった。叙事詩という観点か。ううむ。