筒井康隆『ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集』

筒井先生は本当に凄い。メチャメチャ面白い。今まで筒井作品を読んでこなかったことが心から悔やまれる。人力検索で「本が大好きなのですが、この本をもっと早く読んでればよかった!!!と後悔した本を教えてください」という質問があったが、今の俺なら筒井作品をお勧めする。
本書には「グロテスク」をテーマに7編が収められている。一口に「グロテスク」と言っても、その中身は多種多様である。
「ポルノ惑星のサルモネラ人間」は、ある惑星の奇怪な動植物が全て「いやらしい」という設定になっている。例えばゴケハラミという植物は、処女でない女性がその胞子を吸うと妊娠してしまう妖草である。ヨコイタクラゲの棘には毒があり、何度も刺されると射精に至ってしまう。すべての高等動物は、動物の種を超えてあらゆる個体と交尾しようとする。
「妻四態」は、奥さんが冬眠・羽化・産卵・脱皮する話。
「イチゴの日」は、醜女のタレントが悪魔に魂を売って、今まで「美人だ美人だ」と持ち上げて騙してきた人々に復讐する話。
といった具合にエロ、スプラッター、悪魔、糞便、蛮人などが次々に現れる。スプラッターと糞便は表裏になっていて、それを簡単に説明すると、


背筋も凍るような恐怖

糞便がとめどなく溢れる

血みどろの惨劇


というパターンになっている。恐ろしい場面を描いてるはずなのに、この糞便の垂れ流しによって笑ってしまうんだよね。糞便って小説でも映画でも描きづらい部分だから、この描写は凄く新鮮に感じる。
筒井作品では「妻」が非常に重要なポジションを占めている。妻が変になる、妻の目が気になる、という表現が多い。「筒井作品における妻」なんて評論を誰か書いてそうだね。どっかにないかしらん。
また、町田康筒井康隆の系譜なんだなぁ、と気づいた。え?気づくの遅すぎ?

ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫)

ポルノ惑星のサルモネラ人間―自選グロテスク傑作集 (新潮文庫)