マルクス、エンゲルス『共産党宣言』

「今日までのあらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」で始まり、「万国のプロレタリア団結せよ!」で締めくくられる文書。「共産主義者同盟」の理論的で実践的な党綱領として、1848年にマルクスエンゲルスによって作成された。「われわれ」が「諸君」に語りかける構図になっている。政治的な文書であるため、理論を詳細に記述しているわけではない。もっと深く知りたい場合は『資本論』や『経済学・哲学草稿』や『ドイツ・イデオロギー』を読んだ方がよさそうだ。
何と言っても「序文」が多い。「一八七二年ドイツ語版への序文」やら「ポーランド語版への序文(一八九二)」やら、本文に入る前に6つの序文が掲載されている。と言ってもこれらの序文は無意味に存在しているわけではなく、『宣言』作成時点(1848年)からどのような変化が起こったかを綴っているので、一通り目を通しておいた方が理解もより深まる。
第1章「ブルジョアとプロレタリア」には階級闘争の歴史的発展が書かれている。ブルジョア階級が封建制を打倒して資本主義が栄えているのが現状であるが、このブルジョア支配をプロレタリア階級が打倒してプロレタリア支配を打ち立てなくてはならない、という論旨。ポイントは、ブルジョア支配の歴史的意義を認めているところであろう。封建制→資本制→共産主義という流れが必然であって、封建制共産主義とはならないのである。また、経済のグローバル化や「都市vs農村」という問題は、資本制の初期から存在したことも書かれている。
第2章「プロレタリアと共産主義者」では共産主義者のスタンスが書かれ、第3章「社会主義的および共産主義的文献」では共産主義と似て非なるものへの批判が書かれている。どちらも、共産主義に対する誤解を解こうとしている印象である。

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)

マルクス・エンゲルス 共産党宣言 (岩波文庫)