『機動戦士Zガンダム』の感想

せっかく短期間で全50話を鑑賞し終えたので、まとまった感想を書いてみましょう。内容に詳しく触れますので、知りたくない方は読まないようにしてくださいな。この物語の特徴を挙げればキリがないのですが、私が特に興味を持ったのは3つです。
1つ目は、対立の構図が混沌としている点です。『機動戦士ガンダム』では地球連邦対ジオンという形でした。続編である『Zガンダム』では、ジオンの残党狩りを名目として結成されたティターンズが地球連邦を牛耳り、圧政を敷いています。そのティターンズに対抗するのが、ジオンのエースパイロットであったシャアを中心とするエゥーゴ。物語はエゥーゴを「正義」として進んでいきます。中盤以降は、ハマーン・カーンを中心とするアクシズがザビ家復興を掲げ、第3勢力としてエゥーゴティターンズの間を行き来し、最終的には三つ巴の戦いとなります。私は幼い頃に『Zガンダム』を見ているはずなのに、物語の展開をほとんど記憶していませんでした。まぁ、それも無理ないですね。構図を単純化しないことが、リアリティを生み出していると思います。
また、裏切りが横行します。はっきりと仲間を裏切った人物はエマ・シーンレコア・ロンドの2人ですが、パプテマス・シロッコジャミトフ・ハイマン暗殺、ヤザンによる間接的なジャマイカン殺し、レコアによるドゴス・ギア撃沈など下克上も幾つかあります。また、厳密に言えばシャアはアクシズを、アムロとブライトは地球連邦を裏切っているとも取れます。裏切りに付随する葛藤、下克上による急展開は、とても見応えがあります。
2つ目は、一貫して悲劇である点です。序盤にカミーユの両親が目の前で殺されて以来、これでもかとカミーユの身に悲劇が降りかかります。好きだったフォウ、自分を兄と慕ったロザミア、自分が姉のように慕ったレコア、救ってやりたかったサラたちはみんな敵であり、モビルスーツで戦う破目になります。フォウはカミーユをかばってジェリドに殺され、ロザミアは自らの手で殺し、レコアはエマに殺され、そのエマも死に、サラはシロッコをかばってカツに殺され、そのカツはヤザンに殺され、と主要人物はほとんど死んでしまいます。カミーユ自身も、シロッコを倒した際に心を道連れにされてしまい、救いのないラストとなります。「悲劇」として見た場合、この『Zガンダム』はどのように捉えられるのでしょうか。ちと、調べてみたい。
3つ目は、多様な女性が描かれている点です。フォウとロザミアは強化人間として手を加えられているので除外しますが、レコア、エマ、ファ、サラ、ベルトーチカについて考えて見たいと思います。
まず、レコアとエマ。2人とも仲間を裏切ったわけですが、その性格は好対照です。感情で動くレコア、主義で動くエマと言えます。第49話では、レコアとエマはモビルスーツで戦います。そこでレコアは「男たちは戦いばかりで、女を道具に使うことしか思いつかない。もしくは、女を辱めることしか知らない」と言って散ります。そうは言うものの、レコアは自分が依存できる男性を心から欲していて、シャアが心を許してくれないことに失望してシロッコの元へ走ったのです。シロッコはそれを見抜き、レコアの心の隙間を埋めることで利用しやすくします。レコアに限らず、シロッコは人の心を見抜き、上手に利用しています。レコアの「辱め」に関して、少し触れておきましょう。ジャブローカイ・シデンとともに捕まった際、レコアは辱めを受けたことになっています。詳細は語られていませんが、その後の発言を総合すると、性的な辱めである可能性が非常に高いと思います。
エマ:あなたは女でありすぎたわ
レコア:そうよ、私は女よ
という会話からも明らかなように、エマは女である前に軍人であり、レコアは軍人である前に女であったわけです。私の好みを申しますと、感情で動きすぎるレコアは好きではありません。知的で勝気なエマの方が断然好きですね。まぁ、一般的にはエマ型よりレコア型の方が多いのかな…
ファは前作のフラウ・ボゥと同じ役割、つまり「お節介な幼馴染み」ですね。カミーユとは度々ぶつかります。幼いなぁ、という印象ですな。サラはシロッコを心から崇拝しているお嬢さんですが、カミーユやカツと触れ合ううちに心境が変化してきます。サラ、フォウ、ロザミアを説得するカミーユは、なんだか女の子たちを宗教団体から脱会させようと頑張っている人みたいです。
サラの人間性が最もよく表れているのが、第31話の「ハーフムーン・ラブ」ですね。ウィンドウに映る私服の自分に見惚れたり、公園でカミーユとアイスを食べながら「私、こんな風にして食べるの初めて」と言ったりするサラを見ていると、普通の女の子でありたいのに「パプテマス様」のためにそれができない可哀想な境遇に置かれていることが分かります。それ以前にカツを騙して脱走したことを含めまして、リアリティのある人物だと思いました。
最後に触れておきたいのがベルトーチカ。弱々しくなったアムロを蘇生させた人物ですね。
ベルトーチカ:女の愛撫で男を震い立たせることが出来るのなら、女はそれをするときもあるのよ。何故だと思う?
アムロ:男を試しているんだろ
ベルトーチカ:そうよ、自分に相応しい男になってほしいからね。でも駄目だと分かれば捨てるわ。同情してる暇なんてない
おいおい、ベラベラ喋りすぎだろ?とも思うのですが、この会話、真理を突いてるように思えるのですよ。いかがでしょうか?
以上が、『Zガンダム』を見て私が感じたことです。ありきたりな考察でしょうけど、とりあえず感じたことをメモっておきたかったので。