『〈意〉の文化と〈情〉の文化』王敏

『〈意〉の文化と〈情〉の文化』王敏
本書は中国側から見た日中論です。経済については上手くやっていこうとするのだが、政治感情は相容れない「経熱政冷」状態の日中関係を、如何にして発展させていくか。この問題を、比較的若いジャパノロジストたちが綴った本と言うことです。タイムリーな本ですね。以下、引用・要約。

日本人の中国嫌いの理由を中国側がまとめると、①時代遅れの教条主義、②犯罪者の輸出に対する放置、③中華意識と周辺諸国に対する属国視などになるらしい。これに対して、中国人の日本嫌いは、①アジアにおける日本の傲慢な態度や姿勢、②日本が伝統文化を簡単に捨てて欧米に追随していい子ぶっている、この二つに集約できるのだという。

こうしたギャップは簡単に埋められない。交渉や会議の場面でもその溝は埋まらない。日本では会議後に酒を酌み交わして不備を埋めるのだが、中国では会議の席で自分を売り込めないようではダメらしい。こうしたギャップを「意」を重視する中国・「情」を重視する日本と捉えている。
そこで本書では、文芸やサブカルチャーの交流から入っていくのはどうだろうかと提案している。中国には「小資」(プチブル)という層の人々がいて、彼らのセンスとマッチした「日劇」や村上春樹作品がかなりのブームになっているのである。「日劇」とは日本のトレンディードラマのことである。
これはまさに外交における「ソフトパワー」のことですね。今回の「千夜千冊」は、読みながらかなり興奮しましたよ。