ピーター・チェルソム『Shall we Dance?』

周防正行版の忠実なリメイク。キャストの雰囲気もストーリーも全く同じ。とくにダンス教室の先生は草村礼子そっくり。故に周防版と同じくらい楽しめた。
周防版とハリウッド版の違いをあげるとすれば3つ。一つ目は、ダンスを踊ることに対する「恥じらい」のようなものが、ハリウッド版では薄まっていたこと。アメリカは高校卒業のパーティーで必ず踊る社会だから、当然といえば当然かな。
二つ目は、主人公の「引っ込み思案な性格」がなくなっていたこと。役所広司が演じていたのは無口で大人しいサラリーマンだった。草刈民代は役所に、ダンスのパートナーに対してステップを踏み込んでいくことが重要だと説いていた。コミュニケーションの際、相手の懐に入り込むことの重要性をそこで匂わせていたわけだ。私はこの場面を見て、「ああ、ダンスもコミュニケーションなんだな」としみじみ感じたものである。一方ハリウッド版のリチャード・ギアは弁護士であり、彼の同僚曰く「チャーミング」とのこと。つまり、どちらかと言えば社交的なのである。
三つ目は、終盤の展開。ギアは奥さんに薔薇をプレゼントしたり、最後のパーティに奥さんを連れて行ったりする。周防版では役所‐草刈の関係が主軸だった。これに対しハリウッド版は、ギアが妻(スーザン・サランドン)への愛情を取り戻す形になっている。はっきり決着をつけないと、観客が納得しないのかね。

Shall We Dance ?(初回限定版) [DVD]

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