鶴田法男『予言』

ホラー好きの妹が見たいというので鑑賞。監督は鶴田法男。出演はノリピー、三上博史吉行和子小野真弓。原作はつのだじろうの「恐怖新聞」。
研究者の里見(三上博史)、妻の綾香(酒井法子)、娘の奈々の家族3人は、車で実家に帰省していた。その帰り道、里見が仕事のメールを送るために電話ボックスに寄ると、タウンページの下に1枚の新聞記事を見つける。そこには娘が事故死するという内容の記事が載せられていた。慌てて車に駆け寄ろうとするも、奈々の乗った車にトラックが激突して炎上。新聞の予告通りになってしまう。3年後、夫と別れた綾香は、夫が事故の前に見たという新聞の謎を解くため、大学で「恐怖新聞」の研究を行っていた。一方里見は、高校の講師として空虚な日々を送っていた。彼の前に、再び未来を予告する記事が現れる。
以降ネタバレで。
ホラー映画ではあるが、SF的な要素が強い。アカシックレコードと言って、世の中に起こる全ての出来事が記録されているものがある。未来の出来事も過去の出来事も、そこに全て記されている。恐怖新聞は、そこから送り付けられるものである。アカシックレコード自体はこの映画オリジナルの設定ではなく、ルドルフ・シュタイナーが提唱した概念である。
里見は恐怖新聞の予告した未来を変えてしまったことで、何かの怒りに触れ、娘が死んだ場面を何度も体験させられる。事故が起きることを分かっている彼は、その運命を変えようと奔走する。しかし、娘を助ければ妻が轢き殺され、事故現場に行かないようにすれば家族3人が事故に遭う。何かしら事故が起きてしまうのである。そこで彼は、自分ひとりだけ死ぬパターンを選択する。
一つの出来事に対して、他にあり得た可能性が無数に存在する。里見はその幾つかの可能性を生き直してみたわけだ。そういう意味で、「平行世界」を描いた映画。序盤は「恐怖新聞に予告された運命には抗えない」、という恐怖感を表現していたと思う。しかし、終盤に来てその運命を変えてしまったことで、「運命を変えたら何が起こるのか」という恐怖にシフトする。
この手の話は好きなので、私はけっこう楽しめた。ホラーではなくSFとしてね。一つだけ納得がいかないのは、なぜ里見は家族が事故死するパターンしか生き直せなかったのか、ということ。可能性は無数にあるのに、家族が事故死する運命しか選ばせてもらえないのは、誰の意志によるのか。あ、でも「運命を変えた罰」ということなら納得できるな。ホラー映画というのは、なぜこんな目に合うのか分からないから、つまり理不尽だからこそ恐怖を感じることが出来ると思う。そういう意味では、色々と勝手に解釈してしまったので怖くはなかった。
映像が緑っぽかったり、別れた夫婦が協力して立ち向かったりする辺りは、『リング』を連想させた。三上博史とノリピーは顔がやつれ、憔悴しきった感じが出ていた。

予言 プレミアム・エディション [DVD]

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