黒田洋一郎『アルツハイマー病』

アルツハイマー病 (岩波新書)

アルツハイマー病 (岩波新書)

アルツハイマー病についての優れた入門書。
脳科学の研究者である著者が、研究者の立場でなく普通の人の立場から、非常に分かりやすく書いている。「アルツハイマー病患者・介護者予備軍の立場から」というフレーズが何度も登場していることからも、「分かりやすさ」に対して意識的だったことが窺える。
アルツハイマー病とはどのような特徴を持つ病気か、どのような治療がされているのか、現時点で原因は何とされているか、どうやったら防げるのかと言ったことが、丁寧に書かれている。
私の父方の祖母も母方の祖母もアルツハイマーと診断されているので、症状に関して目新しさはなかった。
記憶力の低下→自分のことが上手く出来なくなる→妄想・徘徊→入院が必要なレベル
という流れだ。
父方の祖母は、「自分のことが上手く出来ない」段階に来ている。茨城に一人で住まわすのは、そろそろ限界のようだ。
母方の祖母は、記憶力の低下がない。母や伯母らの話によると、むしろ物覚えが良すぎて、後から話を蒸し返されるそうだ。これは、「最近のことは経験全部を覚えられないというような記銘力障害から始まる傾向が強い」という点と異なる。そして「迫害妄想」がひどい。本当にアルツハイマーなのだろうか。
アルツハイマーに限らず脳科学全般は、依然として解明されていない部分が大きい。
著者は何度も「アルツハイマーは多因子性である」と書いている。つまり、原因がどれか一つだけというのではなく、あらゆる「危険因子」が組み合わさって発症するというのだ。
その危険因子の中で、いま最も注目されているのが「βアミロイド蛋白説」である。簡単に言えば、βアミロイド蛋白が、脳内で神経細胞シナプスを破壊し、アルツハイマー病が発症するという仕組み。
アルミニウムが痴呆を起こすことも確からしい。
また、「タバコはアルツハイマーの予防に効果がある」と聞いたことがあるのだが、それをきっぱり否定している。ちとショックだわ。
とにかくポイントを押さえてあり分かりやすいので、アルツハイマーについて知りたい方は、この本から入るべし。
明日から、アルツハイマー病と診断された祖母のいる秋田に行きます。
明後日、祖母を病院に連れて行くのが主たる目的ではありますが、不謹慎な言い方かもしれませんが、色々と吸収して帰って来ます。